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抽象的な空間

絵画や彫刻に抽象絵画と具象絵画があるように、

建築にも抽象的建築と具象的建築があります。


見慣れた建物の形態を発展させる建築が具象的建築だとすると

僕がつくる建築は抽象的建築の範疇に入ると思います。

沖縄で手がけた辺名地の家は、伝統民家の平面、形態を引用していますが、

それでも、伝統をより抽象的に翻訳することを心がけてきた

ように思います。


抽象的であることの意味について、

多くの人にとってはどうでもいい話で

最後は好き嫌いの単純な話で終わってしまうのだけれど

自分の場合を改めて考えてみました。


僕の場合は、抽象的な空間に身を置くと

日常の一コマ一コマ、ちょっとした一瞬に

建築から心が動かされることの頻度が

多いように思います。


そのような時、内省というのか、心を落ち着けて

じっくりと自分の外の世界と交歓する時間に

安らぎを感じます。


ちなみに住宅に限らず、僕にとっていい建築かの判断は

感動するかしないかの一点だけです。

(単純に感動といっても、感動の要素には

専門ならではのたくさんの観点があり

体験の総合的な感想によるものです)


これは、僕が絵画を見たり音楽を聴いたりしても

そう簡単に心が動かないことを考えると、建築で心が動くかどうかは

人によって個人差があるのかもしれません。

音楽や絵画が好きな人は、僕よりもっとたくさん

心が動くのでしょう。どのジャンルにも言えることかと思います。


シンプルで何もない空間の中で、空間や光や音、

外の気配、家族の気配だけが漂い交わる中だからこそ

家族とか個人とか周囲の環境などの内に秘めた魅力が

浮き上がってくる。

モノの豊かさではない、形のないものの豊かさ。

そういう本質的な豊かさに向き合える住空間は、

生活や人間が美しくなるのではないかと思っています。


シンプルであることの力を信じています。


by jutok | 2018-02-14 10:54 | 建築論